農村の結婚式
新しい試みをもった農村の結婚式

(2) 菅原伊弘さんと愛子さんの場合

栃木県芳賀町といっても、すぐ見当はつかないかも知れませんが、宇都宮から水戸・に向かうて二〇キロ東方にある町で湘戸数三四○○農家としては二八○○戸くらい、一戸あたり一町一反の田畑をもつというから、農村どしてはよいほうでありましょう。その中の下高根沢地区の「かぶど虫クラブ」という青年の会員のこれはその結婚話。

「かぶと虫クラブ」とは当時高校を出た一〇名の青年が、農事の研究を申心に、農閑期にはキャンプやスキーを楽しむためにクラブを組織しました。しかし年を重ねるに従い、自分たちの結婚問題が現実の問題とレて、クラブの話し合いの中に、起きてきたのです。今も残っている農村の古いしきたりや、結婚式のことなどが、他の問題とともに、真剣に考えられてきました。そして、自分たちの考えていることを実現させる意味で、自分涜ちの結婚式から改善しようと、クラブ全員が何日か相談し合うて、次のような改善結婚式なるものができあがりました。」

グループで定めた結婚式ここのグループで定めたことは、

(1)酒の入らぬ祝典にすること以前は、お客さまは昼ごろからお酒を飲み始め、花嫁の到着するころは、もう酔っぱらってしまって、式も披露もない状態となってしまう。それではいやだ。みんなに祝福されるような式にすること。式と披露を分離すること。

(2)引出物を廃止

(3)写真はグループの人がとるそのほうが、町の写真家を頼むより、ずっと安くあがる。引き伸ばして台紙なし、みんなに配る。

(4)当日入籍手続きをとること農村に多い、ずるずると内縁関係となってしまう、あとでいろいろな問題が起こりがち、こういうことの絶対にないように、すぐ、入籍の手続きをする。

(5)当日新婚旅行にたつこと披露宴の半ばに新婚旅行に出発。そのあとのことは、グループで乳牛や鶏の世話まで全部引き受ける。新生活の出発にあたって、新郎新婦二人がせめてゆっくりとした気分で語り合えるようにというのである。行く先は、県内の鬼怒川温泉場、宿も特約してあるという。

(6)新婚旅行のカバンは共有新婚旅行のカバンは共有。グループで回り持ちに使う。ふだんは旅行の機会も少ないので、共有でじゅうぶんだとのこと。

(7)お祝い品はオルゴール時計会員一〇人で二〇〇円ずつ出し合って、オルゴール時計をお祝いとして贈る。その他は二〇〇円の現金を包むだけ。

以上、こうしてこの会は、昭和二十五年発足以来一〇年。三十二年四月五日に第一回の結婚式をあげて以来七組。一〇人だった会員は、子どもを入れてすでに二二名。最初はずいぶん困難や非難に堪えてきたが、会員の熱意とそのまじめな生活態度は、村の青年たちを次第にこの会員たちの方向に近づけたようであります。
菅原伊弘さんは、八人目の結婚者。その招かれた実況をお伝えしましょう。


式次第

式場は伊弘さんの自宅、ふた間ぶっ通しにつづけられた座敷、床の間にはめでたい軸、花も対に生けられ、雌蝶雄蝶の銚子と、朱の三つ重ねの杯、婚姻届、誓詞がおかれて、すべて祝意に満ちた飾りつけはできあがりました。台所にはごちそうの用意が整い、そのそばの納屋には、乳牛がおとなしく寝そべっています。

花嫁到着

午後二時、花嫁さん到着、新郎お迎え。グループの会員たちは、少しテレくさそうな顔ながら、大きな声で歓迎の歌をうたう中を、振袖姿の花嫁は介添えに助けられて廊下から上がって座敷へ。

記念撮影

式の始まる前に記念撮影。会員たちが三脚を立て、ライトをあてながら、なかなか慎重です。

司会者のあいさつ
仲人の新郎新婦ならびに親族の紹介
三々九度 友人の手によって、この杯はつがれました。
誓詩
入籍手続き これは友人がその日に役場へ届けました。
祝辞 謝辞

以上三〇分間で、めでたく結婚式は終わりました。参列者も、特に式服で改まることもなく、若々しくすがすがしい式でした。



農村の結婚式について

菅原さんや、信州の樋口さんの場合のように、日本の青年たちの間には、このような結婚式が、次第に広く行なわれようとしています。封建性の強い農村で、こうして慣例を破る結婚式は、まだまだ困難も多いでしょう。けれど青年たちは、自分たちの生活をもっと大事に育ててゆくことに強い意志をもって、困難を切り開いています。
式と届け出を同時に行なう。これこそ、これからの正しい結婚式のあり方、理想といえましょう。